携帯電話サービスは2005年6月末時点で8,800万加入に達した。対人口普及率(1億3,000万人)でみると67.6%となり、ほぼ飽和状態に近づきつつあると一般的には見られている。
各移動体通信キャリアは端末の機能競争と、その販売インセンティブ戦略により熾烈な加入者シェア競争を続けてきたが、第三世代(3G)への移行と共に、高速データ伝送サービスを主軸に、ソリューションサービスの展開やパケット定額制に見られる料金体系の差別化等事業者としてのリソース/体力を求められるところとなっている。
更に、2004年からの携帯電話サービス市場の動きは大きなトピックスの連続でもあった。800MHz帯電波周波数の割り当てを強行に主張して新規参入の烽火を挙げたソフトバンクグループの出現、その後、1.7GHz、2.0GHz帯の新規周波数帯獲得を目指してイーアクセス他新規参入を伺う事業者も出て来ている。その反面、Vodafoneが始めての加入者純減を公表せざるを得なくなった状況もあり、逆にau陣営は「着うた」を大きな戦略コンセプトにしつつも、パケット定額制のような精緻な料金体系による加入者増加策の成功体験をしている。
飽和状態といわれる市場に向けて、前述のような新たなサービス展開による競争の激化の背景には、2006年には導入が予定されているMNP(モバイルナンバーポータビリティ)制度が、一大ビジネスチャンスと捉えているからに他ならない。
そして、第三世代サービスの更なるサービス品質の向上として、高速データ伝送によるモバイル・データ・サービスの提供により、インターネットとの更なる親和性によるモバイルソリューション構築が現実的に利用に耐えうるレベルまで向上したことにある。
今後、関心を呼びそうなテーマとしては、“おサイフケータイ”、モバイル・セントレックス、公衆無線LANサービス、モバイル放送あたりが注目される。
非接触IC「モバイルFelicia ICチップ」を搭載した“おサイフケータイ”は、先行したNTTドコモに続いて9月にKDDIが、10月ころにボーダフォンが発売する予定である。現在はNTTドコモだけが先行しているが、各社から端末が出そろえばビジネス活用に拍車がかかり、コンシューマ向けサービスを提供する企業を対象にしたCRM(顧客情報管理)ソリューションなどの品ぞろえも充実してくる可能性がある。
また、モバイル・セントレックスと公衆無線LANサービスは、すでに製品やサービスがあるものの、共に本格普及はこれからという段階で、使い勝手、セキュリティ、業務上の効果といった実務面の情報ニーズがより高まるとみられる。
モバイルと放送の融合については、すでアナログTV放送やラジオ放送が受信できる端末も出ているが、本格的な放送との融合とは言い難い。単に、チューナーICを搭載することにより「地上波放送」を携帯電話で受信するだけの機能であり、電波状態が悪ければ受信こそすれ、番組を見ることはかなわないのが現実である。
これらの問題を解決すべくモバイル専門の放送が出現するところとなっているが、まだキャリアサービスにまでは至っておらず、今後のビジネスモデルのイメージがどのようになるのかも大きな関心事となっている。
これらの要因からモバイル・データ・サービス/ソリューションの市場拡大に大きな期待が出来るとの予想を元に、本調査資料を発刊した次第である。
今後の戦略立案の基礎資料として多くの方々に活用されることを願う次第である。