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『2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編』まとまる(2021/7/7発表 第21065号)
パブリッククラウドの国内市場を調査
- ■2020年度見込(2019年度比)
- ■パブリッククラウドの国内市場(リソース提供) 1兆7,265億円(25.2%増)
新型コロナの影響でテレワーク環境構築が進み、オンプレミスからの移行進展
うち、SaaSは1兆円突破- ■2024年度予測(2019年度比)
- ■クラウドインテグレーションを含めたIaaS/PaaS市場 1兆4,022億円(2.2倍)
デジタルトランスフォーメーションの取り組みが進み拡大
ベンダー別には、メガクラウドベンダーがけん引
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、テレワークの普及により急速に利用が拡大しているSaaSや、AIやIoT、データ分析などデジタルトランスフォーメーションを推進するにあたり、活用機運が高まっているIaaS/PaaSなど、パブリッククラウドの国内市場を調査した。その結果を「2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編」にまとめた。
「市場編」ではSaaS、DaaS、IaaS/PaaSといったパブリッククラウド市場を調査・分析し、将来を展望した。「ベンダー編」では42社の事業者の動向を整理・分析した。
- ■調査結果の概要
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■パブリッククラウドの国内市場(リソース提供)
2020年度見込 2019年度比 2024年度予測 2019年度比 SaaS 1兆332億円 123.7% 1兆6,054億円 192.2% DaaS 364億円 117.8% 566億円 183.2% IaaS 4,363億円 124.6% 7,090億円 2.0倍 PaaS 2,206億円 135.3% 4,586億円 2.8倍 合計 1兆7,265億円 125.2% 2兆8,296億円 2.1倍
2020年度のパブリッククラウド市場は1兆7,265億円が見込まれる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、これまでオフィスで行っていた業務をいかに就業場所に関係なく行えるかが重要視され、テレワーク環境の構築を目的とした需要が増加したことから、前年度比25.2%増と大幅に伸びるとみられる。
2024年度には2019年度比2.1倍の2兆8,296億円が予測される。ニューノーマル時代において、AIやIoT、データ分析などのデジタルトランスフォーメーション推進に伴う利用増加が期待されるほか、クラウドネイティブな仕組みへの変更、サーバーレス化やコンテナなどを活用したインフラの効率化への取り組みなど、運用コスト面や生産性の効果をより求める機運が高まっており、大幅な拡大が期待される。 -
■SaaS
アプリケーションを提供するサービスであり、業種を限定せず利用できる基幹系・情報系・セキュリティ系の業種汎用型SaaS、特定業種で利用される業種特化型SaaSを対象とする。
2020年度は、新型コロナの影響により、従来対面や紙で実施していたアナログ業務のSaaS化が進んだことで、市場は1兆円突破が見込まれる。この動きがさらに顕在化することで、今後も市場は拡大が続くとみられる。
業種汎用型が70%以上を占めており、情報系SaaSを中心に、重要情報を扱うことになる基幹系SaaSの利用も増加しつつある。また、基幹系SaaSの増加によって、同じクラウド環境で利用できるセキュリティ系SaaSを併せて導入するケースも増えている。
業種特化システムでは、徐々にSaaSへの移行が進んでいる。大手企業において、ビジネス環境がすさまじいスピードで変化する中、スクラッチやパッケージベースのシステムでは変化に迅速に対応するのが難しくなりつつあることから、常に最新機能が利用可能で柔軟にシステム連携が可能なSaaSの採用が進められている。 -
■DaaS
デスクトップ仮想化/シンクライアントのうち、共有基盤上にデスクトップ仮想化環境を提供するサービスを対象とした。2005年度ごろよりオンプレミス環境でのデスクトップ仮想化/シンクライアントの導入が進んでいたが、初期投資の大きさや運用管理の難しさから、ベンダーが所有する基盤を利用したDaaSへの移行が進展している。
2019年度は「Windows10」への移行ニーズに加え、東京五輪に向け関東圏の企業でテレワークの導入が進められたこともあり、大手企業を中心にDaaSの採用が進んだ。2020年度は、緊急事態宣言の発出により、テレワーク環境の整備を進める企業が全国的に増加したことで、市場は前年度比17.8%増の364億円が見込まれる。社会において多様な働き方が認められつつある中、今後も人的リソースの変化に応じて、柔軟にクライアント環境を設定・変更できるDaaSの需要は高まっていくとみられる。 -
■IaaS
サーバー、ストレージ、ネットワークインフラのリソースを提供するサービスを対象とする。
市場形成当初は、急激なトラフィック増加や柔軟で迅速なサービス開発・提供が可能なことから、ゲームやWebサービスの基盤として仮想サーバーを利用するエンターテインメント系企業の需要がけん引していた。徐々に一般企業においても採用が広がり、社内システム基盤としての利用が進みつつあることから、市場は拡大している。仮想共有型/仮想専有型がけん引しているが、移行後もオンプレミス環境と同様の環境で運用していきたいというニーズも強く、柔軟なカスタマイズが可能な物理専有型の注目度が高まっている。 -
■PaaS
アプリケーションを稼働させるためのプラットフォーム/ミドルウェアのリソースを提供するサービスを対象とする。
メガクラウドベンダーが主体となってPaaSのラインアップ拡充を進めており、国内ベンダーにおいてもアプリケーション開発基盤として、もしくはデータベース/データウェアハウスとしての利用が増えたことで市場は拡大している。また、AI/機械学習やIoT、データ分析の基盤としてPaaSを導入し、デジタルトランスフォーメーションの実現に取り組む企業が増加していることから、2020年度の市場は前年度比35.3%増の2,206億円が見込まれる。今後も大幅な伸びが期待され、2024年度は2019年度比2.8倍の4,586億円が予測される。 - ■注目市場
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■クラウドインテグレーションを含めたIaaS/PaaS市場
2020年度見込 2019年度比 2024年度予測 2019年度比 リソース提供 6,569億円 128.0% 1兆1,676億円 2.3倍 クラウドインテグレーション 1,483億円 115.5% 2,346億円 182.7% 合計 8,052億円 125.5% 1兆4,022億円 2.2倍
クラウドインテグレーションは、運用サービスがけん引している。ベンダー各社は、コンサルティング/導入支援などのフロービジネスではなく、運用サービスなどのストックビジネスに注力することで安定した収益確保を目指しており、運用サービスの比率は上昇していくとみられる。 -
■ベンダーカテゴリー別市場
海外ベンダーはメガクラウドベンダー、外資系ベンダー、国内ベンダーはシステムインテグレーター、キャリア/サービスプロバイダーに市場を分類した。
メガクラウドベンダーのウェイトが最も高く、市場の60%近くを占めている。メガクラウドベンダーをはじめとした海外ベンダーが、スケールメリットを生かした展開を進めており、今後も高い伸びが期待されることから、ウェイトも高まっていくとみられる。また、海外ベンダーの多くは、IaaSに加え、PaaSでも豊富なラインアップのサービスを展開しており、今後も多様なニーズへの対応を進めていくとみられる。
国内ベンダーにおいては、システムインテグレーターは、中核ビジネスであるシステムインテグレーションの一環で、過去手がけたシステム構築案件のIaaS/PaaS移行を主体に展開しているケースが多い。キャリア/サービスプロバイダーは、ネットワークビジネスやデータセンタービジネスなど、自社の中核ビジネスの付加価値向上を目的にIaaS/PaaSビジネスに取り組んでいる。国内ベンダーは、国産サービスである点や手厚いサポート体制などを訴求することで差別化を図っており、従来顧客のIaaS/PaaSの導入により、堅調に推移するとみられる。 -
■IaaS/PaaS市場におけるデジタルトランスフォーメーション関連の動向
2020年度見込 2019年度比 2024年度予測 2019年度比 IaaS/PaaS 8,052億円 125.5% 1兆4,022億円 2.2倍 デジタルトランスフォーメーション関連 1,333億円 136.4% 2,837億円 2.9倍 -
これまでも注目度は高かったが、新型コロナの感染拡大を契機に、ニューノーマル時代に向けたさまざまな環境変化に柔軟に対応すべく、IaaS/PaaSを利用したデジタルトランスフォーメーションの実現に取り組む企業が増加している。
AI/機械学習向けは、実証実験から本格導入に移行する企業が増加し、伸びている。機械学習プラットフォームに関しては、オンプレミス環境で導入されるケースが多かったが、短期間での導入やスモールスタートニーズの増加に伴い、利用が増えている。
IoT、データ分析ほかでは、社内外の各システム、各事業所などに散在している各種データを集約し、リアルタイム活用を行うことで、業務の効率化や新規ビジネスの創出などを目指したIaaS/PaaSの導入が加速していくとみられる。
今後、デジタルトランスフォーメーション関連の占める比率は上昇していき、2024年度には20%を占めるとみられる。
内容の詳細につきましては市場編、ベンダー編をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)