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『2012 EMS in China』まとまる(2012/2/2発表 第12011号)

中国を中心とした世界のEMS(電子機器の受託生産サービス)動向を調査

世界のノートPC9割超、携帯電話端末とLCD−TV3割超はEMS生産(2011年見込)

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、中国を中心とした世界のEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受託生産サービス)の動向を調査した。その結果を報告書「2012 EMS in China」にまとめた。

 変化の激しい電子機器市場に対応するため、世界規模で展開するセット機器メーカーの多くがEMSを活用している。メーカーにとって、自社生産するか否かは既に問題ではなくなっている。生産コストの削減、リードタイムの短縮、ニーズへの柔軟な対応といった要件を満たすEMSに、各メーカーとも依存度を一層強めている。
 一方、EMS企業も従来の様に委託を待ち構えているだけでは受注獲得や利益確保が難しくなってきている。コアデバイスを有するメーカーの買収に留まらず、ありとあらゆる部品・材料にまで及ぶ内製化、更なるコストダウンを目指した設計提案、アフターサービスまで含めたトータルソリューション体制などを含めて、より広く、より深く、より密接に、セット機器の生産に入り込んでいる。

 そして、豊富な労働力を背景にEMSの世界的な拠点となっているのが中国である。この調査では、セット機器別にEMSへの委託生産動向をまとめると共に、中国におけるEMSの主要拠点(外資・中国系:55社・拠点、日系:10社)の概要、生産品目と主要顧客、製品分野別売上高、事業範囲、部材の調達動向などを明らかにした。

調査結果の概要
1. 中国の現状
 2010年の電子機器の地域別生産比率(数量ベース)は、中国が53%(46億190万台)と過半数を占めており、名実ともに“世界の工場”といえる。一方、生産の拠点が多い沿岸部では人件費が高騰しており、重慶など人件費の安い内陸部へ拠点をシフトする傾向が見受けられる。しかし、他国へのシフトは少ないため、今後も中国の生産比率が増加していくと考えられる。
2. 大手EMS企業の動向
 EMS大手10社の2010年売上高は、前年比39%増の1,599億ドルとなった。特にEMS世界最大手である台湾の鴻海精密工業(Foxconn)が同60%増と大幅に拡大した。Foxconnの主要顧客はApple、Hewlett-Packard(HP)、Dell、ソニーなどであり、顧客の売上増加に伴ってFoxconnも売上を伸ばした。Foxconnは顧客の要求に対応するべく技術を蓄積しており、製造装置の導入などを進め、金型や部品製造まで自社の要素技術として有していることが差別化に繋がっている。  大手10社の事業領域別売上比率(2010年)は、携帯電話など通信ネットワーク機器が37%、PC・周辺機器が36%、オーディオ・ビジュアルなどコンシューマ機器が12%となっている。Foxconnの事業領域別売上比率は、PC・周辺機器が42%、通信ネットワーク機器が39%、コンシューマ機器が12%と推定される。また、Foxconnに次ぐ規模となるシンガポールのFlextronicsの事業領域別売上比率は、通信ネットワーク機器が43%、PC・周辺機器が22%、医療用機器と工業用機器がそれぞれ9%と推定される。  大手10社の拠点は、中国を中心に、その他のアジア、北米、中南米など世界中に点在している。Foxconnは、台北に本社を構え全世界に拠点を展開している。中国では華東、華南エリアを中心に96拠点を有する。Flextronicsは、中国の7拠点で売上の4割を占めており、次いでメキシコの拠点が2割を占めている。
3. EMS拡大の要因
 1) ブランドメーカーの収益性の悪化

 世界的な景況悪化によって各電子機器市場が伸び悩んでいることや、製品価格が続落していることなどを背景に、各メーカーが生産計画の見直し、自社拠点の統廃合などを進めている。また、生産活動から撤退するブランドメーカーが増加していることも、EMS企業の事業拡大に追い風となっている。
 生産委託が増加したことで、例えばノートPCの組み立てにおいては、旧来上海などの華東エリアが中心だったが徐々に重慶や成都などの西部エリアの比率が上昇している。
 2) EMSの技術力向上
 EMSの活用は従来、低価格帯製品が中心であったが、EMS各社のノウハウ蓄積、最新鋭の実装設備の導入などによって、より高価格帯製品の生産委託が可能となりつつある。
 また、FoxconnやFlextronicsなどのメガEMSは、豊富な資金力を背景に液晶パネルや基板、筐体、金型などのコア部品や外装のメーカーを積極的に買収し傘下に加えることにより、トータルコストの低下、収益性の向上を実現している。
 3) 非生産業種のセット機器市場への参入の拡大
 Amazon「Kindle」を始めとして、異業種企業やサービス提供企業などが、自社事業へユーザーを誘導する為のツールとしてタブレット端末やスマートフォンなどの機器を販売するケースが増加しており、EMSを活用することでコストダウンを図っている。
 4) 新たなキーセットの模索
 コストダウン要求が厳しいノートPCや液晶テレビ、フィーチャーフォンの実績が強みとなるスマートフォンなどは、新規参入のハードルが高い。EMS各社は、他のセット機器に有望市場を求める姿勢を強めている。
セット機器別EMS生産動向(世界市場)
1. ノートPC 2011年見込 EMS生産数量:1億9,100万台(EMS生産率:92.9%)
 ノートPCでは大半のメーカーがEMSを利用している。このため、EMS生産率(全数量に占めるEMS生産数量の割合)は90%を上回り、年々上昇している。2013年には95%に達すると予測される。
 台湾のCompalは、東芝、Acer、Lenovo、Dell、HPなど代表的なPCメーカーを顧客に持つ。同社は昆山、重慶、成都のほか、ベトナムにも拠点を有している。人件費の高騰を背景に、Compal以外のEMS企業も内陸部の重慶で生産を開始している。また、FoxconnがノートPCの生産にも本格的に参入し、シェアを急速に高めている。
2. 携帯電話端末 2011年見込 EMS生産数量:4億9,000万台(EMS生産率:33.3%)
 携帯電話端末はフィーチャーフォン及びスマートフォンを対象としている。ファブレス企業の代表格であるAppleは、EMS生産率が100%となっている。逆にSamsung El.は、自社内製率が100%となっている。LG El.やNokiaも自社内製率が比較的高い。フィーチャーフォンのローエンド端末を中心に、多くのメーカーがコストメリットの高いEMSを利用している。中国の通信機器メーカーでグローバルに展開しているHuawei やZTEもEMS利用率が高い。今後、スマートフォンでも徐々にEMSの利用が増えていくと考えられることから、2013年にはEMS利用率が40%に達すると予測される。
 以前は東南アジア地域にも拠点があったものの、製造コストなどを理由に現在は中国に集約されている。また、北米向けなど一部については、関税の問題により域内で生産、出荷をするケースがあり、Foxconnはメキシコにも拠点を有する。
内容の詳細につきましては『2012 EMS in China』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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